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邦楽

歌舞伎の地方の装いに込められた想いとは?

歌舞伎のために作られ発展してきた長唄囃子

こんにちは。笛方の福原寬(ふくはらかん)と申します。今日は、歌舞伎の地方(じかた:舞踊などの伴奏をする人)としてのお話を少し。

日本の三味線音楽として親しまれている長唄(ながうた:三味線音楽のジャンルのひとつ)やお囃子(はやし:鼓・太鼓など拍子をとる楽器のこと)というのは、そもそも歌舞伎の伴奏音楽として発達してきました。

江戸時代末期頃からは「お座敷長唄」などと言いまして、歌舞伎から音楽だけを抜き出して、純粋に演奏曲として聞く動きが出てきました。その際にいろいろな曲も作られましたが、元はやはり、長唄囃子は歌舞伎のために作られ発展してきた音楽です。

ですから、歌舞伎の舞台では今でも、我々演奏者は主役の役者さんを引き立て、芝居が楽しく良いものになるようにと努めます。
その想いは、演奏は勿論ですが、舞台に上がるときの装いにも表れているのです。


地方の裃(かみしも)には、こんな意味が・・・

歌舞伎の演目もいろいろありますが、たとえば所作事(しょさごと:歌舞伎における舞踊劇)は、普段は黒御簾(くろみす)など目立たないところで演奏する長唄と囃子が舞台にずらりと並ぶ華やかな舞台です。

この時、演奏者は黒紋付に裃(かみしも:男性の正装)という畏まったスタイルで演奏します。
役者さんを支える縁の下の力持ち!という謙虚な姿勢と、役者さんと共に力を合わせて最高のパフォーマンスをお客様にお贈りするという職人的な心意気・・・この裃に、地方としてのスタンスがよく表れています。

たとえば「京鹿の子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」という演目の場合、舞台の背景が一面満開の桜となりますので、裃も桜の花柄となります。
単体で見ますとなんとも可愛らしく、演奏者である地方としては場違いな華やかさとも思えますが、舞台に並びますと背景に溶け込むように一体となり、目立ちすぎず控えた形に見えます。

演奏中の様子1
また、「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」は成田屋のお家芸ということで、成田屋さんに敬意をはらい、市川家の三升(みます)の紋がついた市川家の色の裃を使わせて頂きます。

演奏中の様子2

謙虚さを忘れずに、舞台に立つ

歌舞伎の舞台は華やかですが、伴奏者である我々のこのような謙虚さが演奏や所作に表れなければ、お客様に楽しみ喜んで頂けるような物に仕上がりません。

ぜひ、次に歌舞伎をご覧になるときには、演奏は勿論ですが、この様な地方の伝統的スタイルにも想いや意味があることを思い出していただければ幸いです。

この記事の著者

笛方 福原流
福原 寬(ふくはら かん)

福原流笛方。四世宗家 寶山左衛門師(六代目福原百之助 人間国宝)に手ほどきより師事。東京藝術大学 音楽学部邦楽科、同大学院 修士課程 修了。歌舞伎や日本舞踊会などの古典を中心とした演奏活動のほか、NHK古典芸能鑑賞会、国立劇場主催公演などの企画公演、能楽と歌舞伎囃子の融合を目指す三響会に出演。名古屋市民芸術祭審査員特別賞受賞。アテネオリンピック・シンクロナイズドスイミング日本チームテーマ曲の演奏。横笛「苑の会」主宰。国立音楽大学・東京学芸大学 非常勤講師。目黒学園カルチャースクール講師。1992~1997 東京産経学園講師。2006~2008 国立劇場養成課講師。

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