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和と共に生きる

お稽古、そして教えるということ

こんにちは、和太鼓奏者の兒玉文朋です。

“和もののお稽古は始めにまず正座をしてご挨拶から始まります。”

先日、和ものびと発起人の藤間翔央さんが寄稿した日本舞踊のお辞儀についての記事を拝見し、お稽古、そして教えるということについて改めて色々と考える機会がありました。ですので今回は、私が日頃、和太鼓のお稽古を通じて感じていることを、飾り気なくお話ししたいと思います。

和太鼓の稽古


おしえることはならうこと〜教育と共育

私は普段、自分の教室をはじめとして、学校やワークショップなど様々な場所で、幅広い年齢層の方々を相手にお稽古をしています。
他の多くの和ものの稽古事とおなじように、和太鼓もまた、弟子は師の姿を見て技を学び、盗み、日々上達を目指します。

このとき、「教える側」である師は、当然「教わる側」の弟子にその培った技術や心構えを伝えますが、実は「教える側」と「教わる側」の関係は決して一方通行ではなく、師もまた、弟子から多くのことを教わっております。

組太鼓
近年の和太鼓は創作太鼓が主流で、「組太鼓」と呼ばれ、複数の演奏者がまるで一体となったかのように動きを揃え、息を合わせ、音を揃えて演奏します。

それぞれ生いたちも、性別も、体格も、バックボーンもすべてが異なる人達が、稽古を重ねて「立ち居振る舞いを揃える」、楽器なら「音を揃える」、それはとても果てしない作業です。
「音を揃える」ためには、音楽的な要素は勿論ですが、曲の解釈や、所作をふまえた基礎、つまり「日頃のお稽古にどう臨むか」が大事です。

そのため、師は、稽古の中で弟子の仕草や細かい表情や感情の変化を捉え、最も的確な指導や声がけをしていかなければなりません。
例えばお稽古場に来て挨拶をした時の表情や声のトーン、指導をした際にその内容を本当に理解しているか、今この人は伸びる時期なのか、または我慢する時期なのか、などなど。

様々な指導法がある中で、1人1人に的確な方法を見つけて実践することが、弟子の成長に繋がるわけです。

弟子の不出来は師の不出来
ですから、「弟子の不出来は師の不出来」という言葉がありますが、私は「なぜできないんだ!」という言葉は、師の為にもある言葉だと思っています。
どうしたらできるようになるのか、弟子自身だけでなく、師も共に考え続け、学び続けていく。

だからこそ、弟子が稽古を積み、できなかったことができるようになったら・・・
それは弟子だけでなく、師の成長でもあると私は考えます。
共に教え、共に習う、それが稽古、大きく言えば教育というものの自然な姿だと思うのです。


我以外皆我師

また、なにかを学ぶのは、決して稽古のなかだけではありません。師が弟子の姿を見て様々なことを学ぶように、人でなくとも、動物や植物、海や山や太陽や月、見るものすべてに学ぶことがあります。

「我以外皆我師」

この言葉は、小説「宮本武蔵」を執筆した吉川英治氏が記した言葉です。

“食べ物が身体をつくるように、目にするもの、耳にすることは、言葉や行動の骨格をつくる。(中略)人だけではない。動植物、この大自然そのものがお手本であり、さらには起こる出来事、環境、状況、境遇までもが成長へ導く師となるだろう。”
http://www.compass-point.jp/kakugen/4888/より引用)

表現する力
「なぜこんなに胸が高鳴るのか」「この寂しい気持ちはどこからくるのか」

その感情はすべてがどこかに繋がり、生きてくるものです。

それをどのような形で生かすかは、お仕事であり、芸事であり、日常生活であり、人それぞれでのスタイルで良いと思いますが、学ぶ心がそこにあれば、万物すべてが師となってくれるのです。


十までいって、一に戻る

それから、私が大切にしている言葉のひとつに、かの有名な千利休の言葉があります。

「稽古とは一より習い十を知り、十よりかえるもとのその一」

“稽古とは一から二、三、四と順を追って十まで進み、その次には再び初めの一に戻って 又改めて二、三、四、五と順に進むのである。初めて一を習う時と十から元の位置に戻って、再び一を習う時とその習う人のこころはまったく変わっている物である。(中略)中まで習ったから、これでよいと思った人の進歩はそれで止まってしまうのである。”
http://www.chadourasenke.org.br/ja/rikyudoka/d002/より引用)

お稽古を長く続けていくと、どこか満足をして、ないがしろになってしまう部分があったり、ついついすぐ目新しいものに飛びつき、それまでのことを粗雑に扱ってしまうことがあると思います。

初心を忘れない
けれどもお稽古だけでなく、どんなお仕事でも、学業でも、初心を忘れないことは本当に大切です。

自分が何かを始めた時はどんな心持だったか。

以前の「一」と今の「一」は何が違っているのか。

今自分がすべきことをきちんとできているか。

稽古を通じて、あらためて「一」に立ち返り、「自分を見つめなおす時間」を作る。
それも、和ものが大切にしてきた精神ではないかと思います。

ときに自分を見つめ直す
ここまでいろいろお話ししてきましたが、和のお稽古は、日常生活とまったくかけ離れたものではありません。その精神や理念は、普段の生活にも密接に関わっていて、私たちの心を豊かにしてくれます。
和もののお稽古、是非触れてみてください!

この記事の著者

和太鼓 和楽器集団「鳳雛」代表 「鳳雛和太鼓教室」 主宰
兒玉 文朋 Fumitomo Kodama(こだま ふみとも)

東京都出身の和太鼓奏者。幼年の頃より、ピアノを始め、学生時代チューバ、打楽器等を学ぶ。高校卒業後、芸能事務所に所属し、主に舞台役者として活動。感情表現の為に、と太鼓を始め、2005年4月に「鳳雛」を立ち上げる。同年8月、自ら企画、構成、演出、作曲を手掛け初ライブを行い、盛況をおさめる。以後流動的にメンバーを入れ換えながら、演奏会、ライブ、企業イベント、祭事、学校公演、テーマパークのショー、パレード出演等などで演奏活動を行っている。 2011年、宮本亜門氏演出のミュージカル「太平洋序曲」の和太鼓指導。2014年東京マラソン演奏、寺院法要演奏、日本舞踊公演、学校公演・祭事多数。同年「高松宮殿下記念世界文化賞」歓迎の夕べ、明治神宮本殿にて奉納演奏。 国内を中心に活動の場を広げ、視聴者が聴きやすく、全員が楽しめる空間を追求し、その場にあった音楽を提供することを心がけ活動している。

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